Technology 技術紹介

脳損傷

疾患の特徴

外傷性脳損傷は、外部からの力により脳組織が破壊された状態で、脳の機能障害を伴います。救急医療の発展により、救命率は向上したものの、亜急性期以降の脳機能障害に対する治療法はリハビリテーション等に限られており、社会復帰への道を困難なものとしています。

現在の治療法

本疾患に対する治療法として、間葉系幹細胞(Messencymal Stem Cell, MSC)や神経幹細胞を用いた細胞治療法の開発が進んでいます。これらの治療法は、主に神経栄養因子の分泌による神経再生促進や神経細胞保護作用を想定したものです。

さらに治療効果を高めるために期待されているのが、栄養効果に加えて移植細胞が障害部位に遊走、生着して神経系の再構築を促す再生医療です。MSCは障害部位への遊走、生着性を十分に有していないため、再生医療には神経幹細胞が適していますが、ヒト由来の神経幹細胞は、細胞自身の入手や大量の細胞の調製に大きな課題があります。

iPS細胞、ES細胞等の多能性幹細胞はこれらの課題を解決する可能性がありますが、造腫瘍性リスクが存在します。脳内に投与する細胞は十分な安全性が確保されている必要があり、想定と異なる作用が発現した際には速やかに排除可能な仕組みが必要です。

目指す治療法

開発を進めている治療用NSCは、動物モデルにおいて脳の障害部位に遊走し、神経幹細胞の機能に由来する再生医療効果を発揮することを確認しています。iPS細胞から分化誘導して作製するため、安定的かつ大量の製造が可能です。また、CD-UPRT遺伝子を導入しており、仮に移植細胞が腫瘍化、もしくは予期しない作用を及ぼすことがあっても、プロドラッグ5-FCの投与により移植細胞自身を殺傷することができます。いわば安全装置を有する再生医療を実現できます。